代表挨拶
石炭火力発電施設から排出されるフライアッシュをコンクリート材料として使いこなすことは、これまで現場サイドの一つの課題でありました。そのため、設備や現場技術あるいは薬品による「改善」が試みられてきましたが、現状のフライアッシュの普及状況をみれば、”普通・容易”に使いこなすまでには至っていない状況と言わざるを得ません。
天然素材の石炭を燃やした後の灰(フライアッシュ)は副産物であり、完全な品質の均一性を求めることは極めて困難です。それでも、ある一定の品質が保たれ、安定供給されるのであれば、フライアッシュの使いこなしは容易になるものと考えられます。このような考え方に基づき、日本製紙株式会社石巻工場では、2016年1月から工場内で排出されるフライアッシュを加熱改質して未燃カーボンを1%以下に除去し、コンクリート材料として容易に使いこなせる加熱改質フライアッシュCfFA(Carbon-free Fly Ash)の製造を開始しました。このことは、排出時点からフライアッシュを“使いこなし”、普及を推進するための新たな「改善」が始まったことになります。
今日の日本では、橋梁や道路、トンネルなどの老朽化対策ならびに今後の日本の持続可能なインフラ整備のあり方に関する議論が活発に行われております。プレキャスト・コンクリート(PCa)製品は、熟練工不足の解消や建設工事の更なる生産性向上などの必要性からその役割は非常に大きくなりつつあります。また、レディーミクスト・コンクリートについても、安全で安心なインフラ整備の実現のためには、塩害や凍害、アルカリシリカ反応性などの多岐に渡る劣化損傷に対して抵抗性を有する高い品質のコンクリートが要求されるようになっています。そして、これらの要求に対してフライアッシュが適した材料である言ことは良く知られています。
本研究会では、CfFAを用いてフライアッシュを使いこなし、より一層の高品質なコンクリートの利用普及を推進するとともに、建設工事の生産性向上や利用者の「安全・安心」に資する長寿命なインフラ整備の実現に貢献したいと考えております。
研究会代表
東北大学大学院工学研究科土木工学専攻 教授
東北大学大学院工学研究科インフラマネジメント研究センター長
久田 真